はじめに
こんにちは。エキサイト株式会社でエンジニアをしている新卒の岡島です。 普段業務ではFlutterを用いたアプリ開発を行っています。 今回は、業務中にenumについて学んだことがあるので、勉強したことも含めて共有していきたいと思います。
私は、列挙型は単に列挙するだけだと思っていたのですが、想像以上に奥が深くて勉強になりました。前半では公式ドキュメントでの言語仕様を確認し、後半ではenumの使用例について書いていこうと思います。
列挙型(enum)とは?
enumは、名前付きの値(定数)を列挙するためのデータ型です。enumを用いることで値に意味を持たせることができ、可読性と保守性の向上に繋がります。
環境
Dart バージョン: 3.4.3
Enhanced enumsを使用するために、Dartのバージョン2.17以上が必要ですので注意してください。
Dartでのenumの定義
シンプルなenum
enum Weekday {
monday,
tuesday,
wednesday,
thursday,
friday,
saturday,
sunday
}
enhanced enums
Dartでは、フィールド、メソッド、constコンストラクタを持つクラスとしてenumを宣言することもできます。
enhanced enumは通常の class と同様に扱えますが、以下のような追加要件があります。
enhanced enumの要件
- インスタンス変数は、finalである必要がある。
- すべての生成コンストラクターは定数である必要がある。
- 他のクラスを拡張することはできない
- Factoryコンストラクタはenum インスタンスの 1 つだけを返す。
- index 、 hashCode 、等価演算子 == をオーバーライドすることはできない。
- values という名前のメンバーは列挙型で宣言できない。(values ゲッターと競合するため)
公式ドキュメントの例
enum Vehicle implements Comparable<Vehicle> { car(tires: 4, passengers: 5, carbonPerKilometer: 400), bus(tires: 6, passengers: 50, carbonPerKilometer: 800), bicycle(tires: 2, passengers: 1, carbonPerKilometer: 0); const Vehicle({ required this.tires, required this.passengers, required this.carbonPerKilometer, }); final int tires; final int passengers; final int carbonPerKilometer; int get carbonFootprint => (carbonPerKilometer / passengers).round(); bool get isTwoWheeled => this == Vehicle.bicycle; @override int compareTo(Vehicle other) => carbonFootprint - other.carbonFootprint; }
enumの使用方法
使用方法について公式ドキュメントに則り、以下の例を用いて説明していきます。
enum Color { red, green, blue }
インスタンスへのアクセス
列挙された値にはstatic変数と同様にアクセスできます。
final favoriteColor = Color.blue; if (favoriteColor == Color.blue) { print('Your favorite color is blue!'); }
インデックスの取得
各enum値にはindexゲッターがあり、enum 宣言内の値の 0 から始まる位置を返します。
assert(Color.red.index == 0); assert(Color.green.index == 1); assert(Color.blue.index == 2);
全ての値のリスト化
enumのvalues定数を使用すると、列挙された全ての値のリストを取得できます。
final List<Color> colors = Color.values; print(colors); // [Color.red, Color.green, Color.blue] print(colors[2]==Color.blue); // true
switch文での使用
enumをswitch文で使用すると、全てのenum値を処理しなければ警告が表示されます。
var aColor = Color.blue; switch (aColor) { case Color.red: print('Red as roses!'); case Color.green: print('Green as grass!'); default: // これがないとWARNINGが表示されます。 print(aColor); // 'Color.blue' }
名前の取得
列挙された値の名前を取得するには、.nameプロパティを使用します。
print(Color.blue.name); // 'blue'
enumの要素から文字列、文字列からenumへ変換する
Dartのenumでは、フィールドを用いて簡単に文字列への変換をすることができます。
また、文字列からenumへ変換する場合は、標準でbyNameメソッドが用意されています。このメソッドを使うと、文字列から対応するenumの要素を取得できます。
水星→Planet.mercuryのように文字列をenumに変換したい場合はenumの中にgetPlanetFromString
のようにメソッドを作ることもできます。あらかじめ文字列とenumのMapを用意しておくことで、列挙する要素が増えても、文字列からenumの要素への変換が高速にすることができます。
以下に例を挙げて説明していきます。
enum Planet { mercury("水星"), venus("金星"), mars("火星"), jupiter("木星"), saturn("土星"), othor("その他"); const Planet(this.japaneseName); final String japaneseName; static final Map<String, Planet> _map = { for (final planet in Planet.values) planet.japaneseName: planet }; static Planet getPlanetFromString(String value) { return _map[value] ?? Planet.othor; } }
print(Planet.mars.japaneseName); // 火星
Planetの各要素には、japaneseNameフィールドに日本語名が追加されています。これにより、japaneseNameフィールドにアクセスすることで簡単にenumの要素を文字列に変換できます。
print(Planet.values.byName("mercury")); // Planet.mercury
標準で用意されているbyNameメソッドにより、文字列からenumの要素を守則できます。
print(Planet.getPlanetFromString("金星")); // Planet.venus
カスタムメソッドを用意すれば、特定の文字列からenumの要素を取得できます。
まとめ
Dartのenumを使用すると、enumの要素と文字列の相互変換が簡単に行えます。byNameメソッドやカスタムメソッドを活用することで、柔軟な文字列変換が可能です。この記事を通じて、enumの基本から応用までを理解し、今後の開発に役立てていただければ幸いです。