こんにちは、エンジニアをやっている @nukisashineko です。
今回は 古いプロジェクトに linter を導入しようとしたときの一番のハードル。
「linter 導入時の大量の差分により、導入が許可されない」
を華麗に回避するための方法を紹介します。
導入
「linter 導入時の大量の差分により、導入が許可されない」を回避する方法って?
草案 1
- 導入時に 既存ファイルは全部 ignore する
- そうすれば linter 導入時に修正差分が発生しない
想定問答:
「 ignore したら意味ない」
「一番 linter で reformat したいのは古いファイル」
「新規ファイルだけの話かぁー。それなら知ってるからブラウザバックするわ」
ああ、待って待ってブラウザバックしないで、
もうちょっと話が続くのでどうか付き合って。
草案 2
……じゃあ、こうすればいいのでは?
- 導入時に 全部 ignore する
- ファイルに触ったら ignore ファイルから消去と linter の実行を義務付ければいい
想定問答:
「絶対守られないよねそのルール」
「レビューの時にそれを指摘するの大変」
「develop ブランチなら PR 分けて refomat 時の動作確認できるけど、小さな機能追加では動作確認が増えるのが嫌」
わかる。
わかるので、もうちょっとひねります。
草案 3
- 導入時に 全部 ignore する
- ファイルに触ったら ignore ファイルから消去と linter の実行がなかったら機械的に通知する
- "developブランチの変更で"
想定問答:
「それができたら苦労しない」
はい。ほんとにそう。
だから、linter の導入は大体ここで詰まります。
導入がしにくいのは何が原因?
古いプロジェクトへの linter の導入時の最大の敵は、
大きすぎる差分
と 不安になる大きさの影響範囲
( 分割する場合のレビュー負荷の増大
) です。
レガシープロジェクトへの linter や静的解析の導入は 下記のどれかになりがちです。
導入できない
-
大きすぎる差分
と不安になる大きさの影響範囲
が許容できず 分割する場合のレビュー負荷の増大
も許容できなかったケース
-
動作確認せずに一括適用
-
大きすぎる差分
と不安になる大きさの影響範囲
を許容したケース
-
導入されたけど ignore が放置され続ける
-
大きすぎる差分
と不安になる大きさの影響範囲
が許容できず、 -
分割する場合のレビュー負荷の増大
が上手くコントロールできなかったケース
-
これらは github action を上手く使うことで、
分割する場合のレビュー負荷の増大
をコントロールできるようになり、
チームメンバーの努力により、中長期的に linter の実現ができるのです。
注意事項
レビュー指摘や紳士ルールはチーム内で策定しても守られなければ意味が有りません。
人間が守れないなら機械にチェックしてもらればいい
を地で行く
linter の導入方法となります。
※ あくまでも導入方法であり、作業者はチームメンバー全員で取り掛かることであるため、
※ 事前に十分に説明と紳士ルールとしてのチーム内の決を取ってから実行してください。
※ これを導入したことで CI が落ちていることが常態化するのは本意では有りません。
stylelint での実践例
今回の肝: ignore で導入
、放置を検知する CI の設置
実際にチーム内で解決した stylelint を例に上げて説明しますが、
別に php-cs-fix でも php code sniffer でも phpstan でもやることは変わりません。
ignore で導入
、放置されないように CI を設置
です。
stylelint の導入
まずは package.json を更新して、stylelint を導入します。
script には --allow-empty-input
を書いておくと実行対象ファイルが無くても
exit(1)
にならないので 全ファイルがignore されている時に
常に CI の結果が red にならずに済むので、
このような設定をデフォルトで付けておくと導入に便利です。
package.json
{ "name": "productname", "scripts": { "lint:css": "stylelint --allow-empty-input", "lint:css:fix": "stylelint --allow-empty-input --fix" }, "devDependencies": { "stylelint": "11.0.0", "stylelint-config-standard": "19.0.0" } }
.stylelintrc
{ "extends": "stylelint-config-standard", "rules": { "no-descending-specificity" : null } }
.stylelintignore の設置
※ ここでは css は htdocs/css/
に入っているという前提にします。
次に stylelint を実際に走らせて、
エラーが出るファイルについて全部 ignore に詰め込みましょう。
一番最初に膨大な差分がでてしまうと、導入自体が難しかったりします。
徐々に均すために一旦 ignore するのが大事です。
これを commit ください。
# 既に ignore ファイルが有るなら削除 rm .stylelintignore # 1. `-- --quiet --formatter json` オプションにより stylelint の結果が json として出力されるように仕向けたら、 # 2. jq comamnd を使って error と表示されるファイル path のみを取得 # 3. docker で動作させたため、/app という path prefix が付与されているので、削除 # 4. 上記手順で .styellintignore の再作成が行われた時に、差分が少なくなるように sort もしておく docker run --rm -it -v "$PWD/app" -w /app node:14.15.0 sh -c "npm run --silent lint:css htdocs/css/ -- --quiet --formatter json" | jq -r '.[] | select(.errored == true)| .source' |sed -e 's/^\/app\///g' | sort >> .stylelintignore
github action で stylelint を実行する
gtihub action を書いて実際に stylelint を走らせましょう。
最初は paths: '**.css'
をコメントアウトしたり、
.stylelintignore から いくつか path を削除して commit することで、
red で落ちて確実に stylelint が動いていることを確認するといいですよ。
.github/workflows/stylelint.yml
name: SYTLELINT on: push: branches: - master pull_request: types: [synchronize, opened, reopened] # PR の差分ファイルに .css 拡張子のファイルが含まれていた場合のみ動作させる paths: '**.css' jobs: stylelint-check-diff-files: runs-on: ubuntu-latest steps: # clone repository to be able to merge master - name: checkout repository uses: actions/checkout@v2 with: ref: ${{ github.event.pull_request.head.ref }} - name: setting for git # 1.2. setting for git merge command (require user.email and user.name) run: | git config --global user.email "xxxxxx.ci@users.noreply.github.com" && \ git config --global user.name "xxxxxx.ci" # install eclint only - uses: actions/setup-node@v2 with: node-version: '12' - run: npm install # get diff files (excluded binary) and eclint check files - run: | npm run --silent lint:css htdocs/css/
develop ブランチで ignore されたファイルが差分にあったら CI で通知する
ignore されたファイルがそのまま ignore に居続けると、
導入された linter の効果が発揮されにくくなります。
develop に関するPRで、ignore されたファイル が 差分に含まれていたら、
ignore から外して lint による fix を書けることを CI で検知しましょう。
.github/workflows/require_deleting_notpath_from__stylelintignore__by_new_pr.yml
name: REQUIRE-DELETING-NOTPATH-FROM-STYLELINT-BY-NEW-PR on: pull_request: types: [synchronize, opened, reopened] # prefix が develop と名のついたブランチでしか動作しないように修正 branches: - 'develop**' - 'develop/**' jobs: require_deleting_notpath_from__stylelintignore__by_new_pr: runs-on: ubuntu-latest steps: # clone repository to be able to merge master - name: checkout repository uses: actions/checkout@v2 with: ref: ${{ github.event.pull_request.head.ref }} fetch-depth: 0 - name: setting for git # 1.2. setting for git merge command (require user.email and user.name) run: | git config --global user.email "xxxxxx.ci@users.noreply.github.com" && \ git config --global user.name "xxxxxx.ci" - name: setting for git # 1.2. setting for git merge command (require user.email and user.name) run: | git config --global user.email "xxxxxx.ci@users.noreply.github.com" && \ git config --global user.name "xxxxxx.ci" # 1行目. 指定されているファイルがPRの差分ファイル一覧から .stylelintignore に 載っているファイルを取得する # 2行目. .stylelintignore にファイルが載っているなら exit code 0 # 3.4.5行目. CIに引っかかったファイル一覧を表示して、新しいPRでCIを修正するように促して exit code 1 で終了する - run: | export FILES="$((for j in $( git --no-pager diff --name-only ${{ github.event.pull_request.head.ref }} origin/${{ github.event.pull_request.base.ref }} | xargs file | grep ".*: .* text" | sed "s;\(.*\): .* text.*;\1;" | grep .css ); do echo "$j: $(grep -c "$j" .stylelintignore)"; done) | grep -v -E ' 0$' | sed "s;\(.*\.css\): .*;\1;")" \ && [ -z "$FILES" ] \ || ( echo "discovered ignore targets (.stylelintignore) in diff files:" && (for i in $FILES ; do echo $i ; done) \ && echo "please create new branch and PR to remove path from .stylelintignore" \ && ( [ "1" = "" ] ) )
まとめ
古いプロジェクトへの linter の導入時の最大の敵は、
大きすぎる差分
と 不安になる大きさの影響範囲
、
分割する場合のレビュー負荷の増大
です。
これを上手く切り取って小さく扱うために下記を実施することで、
影響範囲も差分も小さく抑えながら 中長期的に linter がプロジェクト全体で適用される
ことを目指しました。
- 導入時に 全部 ignore する
- ファイルに触ったら ignore ファイルから消去と linter の実行がなかったら機械的に通知する
新しいプロジェクトへの linter や 静的解析 の導入は簡単ですが、
レガシープロジェクトへの 導入は難しいです。
レガシープロジェクトでの改善方法も知っておくとなにかに役に立つかもしれません。
ともあれ、これからも改善を頑張っていきたいですね。