はじめまして、エキサイト株式会社・デザイナーの小野寺です。 こちらの記事でレポートを執筆した西場とともに、「WEラブ赤ちゃんプロジェクト」のデザイン・ディレクションを担当しています。
前回は「WEラブ赤ちゃんプロジェクト」の概要とともに、主に交通機関に掲載された実際の制作物と、制作時データの違いなどをメインにレポートしました。
今回は、私が「京都」という歴史ある街に掲示されるクリエイティブを制作する過程で出合った気づきなどをテーマにお伝えしたいと思います!
京都の街が素敵なのには理由がある
普段旅行には行かない人でも、修学旅行などの機会で京都には行ったことがあるよ、という方も多いのではないでしょうか。
古都の面影を今でも多く残す京都の街歩きは、タイムスリップしたような、非日常感を味わうことができると思います。
しかし、そんな素敵な体験は、大切に保存されている古い建築物などだけが生み出しているわけではない、ということを今回改めて学びました。
歴史遺産に近いほど厳格な「京都府景観条例」
1200年の年月に育まれた歴史都市である京都の街並みを守るために、京都市では2007年に「京都府景観条例」という、屋外広告や建築物にまつわる条例を制定しています。
簡単に内容を説明すると、京都市内の「建築物デザイン」「建物の高さ」「広告物」に、「配色」や「掲載場所」「高さ」などに関して規制・ガイドラインを設け、街並みの調和を保つための条例のようです。ガイドラインの厳しさは、地域別に設定され、歴史的建築物の近くになればなるほど厳格になっていきます。
多くの広告物や看板は、街並みの中で「いかに見てもらうか」「覚えてもらうか」といったポイントでレイアウトや配色が考えられていることが多いです。制限を設けなければ、そうしたバラバラに目を引く色の無法地帯と化してしまい、美しい景観が損なわれてしまう、というのは納得です。
▼京の景観ガイドライン - 広告物編 https://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/cmsfiles/contents/0000056/56450/guideline_all.pdf
(このガイドラインを作り上げた人々がまずすごい)
景観の守り方:派手な色はNG!マクドナルドやセブンイレブンも例外はない!
どういうこと?と思われた方はぜひwebで画像検索してみてください。 見慣れた大手企業さん達がガイドラインに合わせてコーポレートカラーを調整して京都の街に馴染んでおられます。
どの色ならOKなのか、という基準はガイドラインに「マンセル値」で表記されています。とても簡単にいうと、明度と彩度の高い「派手な」色はアウト、少し明るめの規制対象色は、使う面積を少なくしてインパクトを弱めてね、ということが示されています。
ガイドラインの一例
「WEラブ赤ちゃんプロジェクト」のキーカラーを調整する
さて、今回のプロジェクトの制作物の中には光栄なことに、ガイドライン上規制がかかる、風情ある地域に掲示されるクリエイティブもいくつか含まれており、ご担当者さまから別途キーカラーの調整が必要、とのご連絡をいただいておりました。
デジタルを主戦場とする我々にとっては、多く建築業界などでのスタンダードとなっている「マンセル値」自体が馴染みが薄く、四苦八苦しつつもブランドカラーのイメージを崩さずにガイドラインを守れる配色を以下のプロセスで選定し直しました。
▼プロセス
先方のご担当者さまより、今回は「マンセル値の彩度6以下」という指定をいただき、最終的にはDICのカラーコードでセーフな色かチェックをしてくださるということだったので、入稿時に指定しているCMYKのコードをDICカラーに変換して弊社でもツールでマンセル値を確認しながら、また色見本帳とにらめっこをしながら色を決める、という流れで最終的な色を決めました。
下の画像の通り、マンセル値を彩度6以下にすることで、少し黄色みがかったマイルドな色になりましたね!
とはいえ、素材によってどんな色が出るのか、刷るまでわからないのが印刷物・・!実際のクリエイティブはどのようになったのでしょう・・!
実際のラッピングバスはこうなりました!
▼入稿データ
▼実際のクリエイティブ
太陽光や写真の具合もありますが、イメージしていたよりも少し鮮やかに、心配するほどには渋い仕上がりにはならなかったようです😀 ほっと一安心する瞬間です。
その他にも前回の地下鉄に引き続き、商店街のフラッグや、バスロータリーの柱などにも「WEラブ赤ちゃんプロジェクト」の赤ちゃんが続々出現中です! 今回制作したグッズ・広告を通じて、少しでも多くの人に「みんなが温かく見守る子育て」について再認識してもらえたら嬉しいです。
最後に
今回の京都府の官民が一体になった「京都府子育て環境日本一推進会議」様とのコラボは、歴史都市ならではの「景観色」についての理解を深め、また、初めて現地視察を行ったことで、机上では体感できなかった改善点なども見つかる良い機会となりました。
プロジェクトのデザインガイドラインをブラッシュアップしつつ、今後ともコラボレーションする団体さまと調和するクリエイティブ制作を行なっていきたいと考えています。